会議前の雑談で●×スーパー取締役から聞かれました。
「齋藤さん、何かもっと儲かる商売ってありますかね?」。
「●×スーパー」は、TVでもたびたび取り上げられ、コストコと並びコアなファンが多く、業績もうなぎ昇りです。
昨年も数十店舗を開店して、当社ではもうすぐ100店舗となります。
大繁盛しています。
“はて、もっと儲かる商売か?”
その時は、「何をおっしゃいます。あれだけ●×スーパーが儲かっているのだから欲張りすぎない方が良いですよ」
と軽口をたたいて終わりました。
“売上が数百億、経常利益率が3%の商売かぁー。
経営層、執行役員、事業部長、管理職、担当者、現場スタッフ。
数千人の大人が、毎日、「あーでもない、こーでもない」と言って知恵を絞り、汗を流した結果。
100円の商品を売って、3円の儲け。これって儲かっているといえるのか?”
現代社会では、優秀でなくとも、生き残ることが比較的簡単にできます。
正確に申し上げますと、“人類の歴史の大部分と比べて、ここ数百年は”というお話です。
(これ以後は、ここ数百年=現代。それ以前=昔。大雑把に表記させていただきます。)
「現代は競争社会で、ストレスにさらされ過酷ではないか」とイメージされがちですが生死というレベルに関しては間違いです。
現に私達のような「優秀でない人々」が普通に生活する事が可能だからです。
昔は(特に農業史以前)では、「全方向の優秀さ。万能であること」が生存するために求められていました。
肉体の強靭さ、五感の鋭さ、危険を察知する能力、回避する能力。
狩を行い、食糧を確保、保存、管理消費する能力、住居、衣服、履物、生活必需品を作り出す能力。
集団内で生き残る能力。
あらゆる生活場面で、能力・技術が無ければ生き残る事自体が難しかったといえます。
それに比べて現代は分業が進み、獲物を捕まえられなくとも、誰かが作ってくれたくれたお肉、お米を食べる事が出来ます。
誰かが作ってくれた住居に住み、靴を履き、服を着て生きていくことができます。
まさに「愚者が生き残れる世界」なのです。
医者、弁護士、パイロットなど優秀な人たちとイメージされる職業ですら「愚者の生き残り戦略」といえます。
ある狭い範囲の分野に関しての技術だけで生きている事は、どの職業、職種ともまったく同じであるといえます。
では実際の業種毎の経常利益率(儲かり効率、儲かり具合?)を見ていきましょう。
日本標準産業分類:大分類 | 経常利益率 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 13.82% |
不動産業・物品賃貸業 | 7.63% |
情報通信業 | 5.36% |
建設業 | 4.83% |
製造業 | 4.14% |
サービス業(他に分類されないもの) | 3.98% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 3.45% |
運輸業・郵便業 | 3.10% |
卸売業 | 1.86% |
宿泊業・飲食サービス業 | 1.55% |
小売業 | 1.49% |
(参照元は「e-Stat 政府統計の総合窓口:
中小企業実態基本調査 令和2年確報(令和元年決算実績)2021年7月29日」)
圧倒的に、「学術研究、専門・技術サービス」は効率よく稼いでいることがわかります。
「学術研究、専門・技術サービス」とはどんな仕事でしょうか。
いわゆる専門サービス業=デザイン、設計、小説家、弁護士、税理士、興信所、研究所
そして私達社労士事務所などです。
一言で言い表すことは難しいですが、おおざっぱに特徴を捉えると、「知識集約型」の商売です。
それに対して、経常利益率が低い業種は、「資本集約型」である傾向がみられます。
小売の代表的なスーパーなどを考えると、大型店舗を構え、多くの従業員を雇用し、店内バックヤード設備(冷蔵庫、配送設備、調理設備)など想像以上に大きな設備が必要となります。
小ぶりな●×スーパーでも一店舗出店で約2億の投資計画となりなります。
私は、最も経常利益率の低い「小売り業」と最も高い「社労士事務所」両方の経営に携わっています。
結論から申し上げますと、「大変さ、困難度」はどちらも同じです。
「5人の社労士事務所」も「5千人のスーパー」も毎日、失敗し、お客様に怒られ、改善しよう努力し、少し感謝を頂き。また失敗し、また努力し、少し感謝を頂き。
毎日七転八倒して、毎夜、仕事の夢にうなされています。たぶん。
利益率が高かろうが、低かろうが数億の利益額だろうが、数百万の利益だろうが結果でしかありません。
その「より良くなりたい」ともがくプロセスが最高の「意義」であるように感じています。
なぜなら、「人嫌い、無愛想、友人は3人。」の私。
昔このような「優秀でない者」は生きていくことができなかったはず。
「愚者」として「失敗、努力、すこし感謝をいただくこと」が、今 神様から生かしていただく条件(意義)ではないかと自分に言い聞かせている毎日です。