会社は、経営者の経営目標を達成するために、経営資源を調達、再配分、投下して目標達成のために事業活動を行います。
今は、人材が経営資源として最も重要ファクターであり、最も高リスク、高コストなリソースにもなっています。
事務所通信でもお知らせしていますように、働き方改革関連法案が今年6月に可決されました。
10数本の関連法案がまとめて可決されました。
平成31年4月から施行される「有給休暇の取得義務化」。
A職員:「齋藤先生、自分で自由に使いたいと思っていた有給が、会社の計画等で取らされる? 取らな
ければいけなくなってしまう! 私は小さな子どもがいますから、子どもの急病や家族の急用時に取
らせていただこうと考えていたのに、本当に困ります。変な法改正ですね」
齋藤:「本当だね。自分の意志で自由にとれるのが有給休暇のはずだよね」
「権利」は自らの意志で行使するか否かを決める。
しかし今回は、「社員に有給を取らせなければ、会社に罰則を与える」ことになってしまいました。
最近、政府は「健康経営」を声高に言い始めています。
そのうち「朝ごはんを食べない社員がいる場合は、会社に罰則を与える」なんてナンセンスなことが起こりえます。
そもそも、労働者と会社が自由意志で「労働者は、会社が求める労働力を提供することを約し、対価として会社が労働者に賃金を支払う」労働契約を締結します。
経営者は、自身の経営目標を実現するために、目標を遂行する能力を持った労働者(優秀な社員)を探します。
それに対して、労働者は能力、人格、経験を磨き、市場価値を高め、高い価格で売れるようにプロモーションします。
そこでお互いに納得、合意できれば労働契約となります。
戦後の混乱が続く時代ではあるまいし、すべて自由意志、自由契約が前提です。
能力不足であれば、仕事は得ることができない。
能力不足で、業務遂行が不十分、不完全であれば契約解除。
賃金不払いであれば契約解除、損害賠償となる。
大人同士が自らの責任で契約を結び約束をするわけですから当然のことです。
しかし、日本では、労働者は「未熟で、弱く、無知で交渉能力もない子ども」とされています。
いやその枠から飛び出さないようにはめ込んでいるようにも感じます。
この偏見から、政府が手を突っ込む(法改正など)とかえって状況が悪くなるケースを繰り返してきました。
例えば、有期雇用労働者の5年無期転換ルール(労働契約法第18条:平成25年4月1日施行)。
この法令が施行され有期雇用労働者の雇い止めが増加し、従来は5年以上雇用していた会社が有期雇用期間を5年未満に規則改正する自衛策をとったことで、非正規雇用者の雇用環境が悪化しました。
また、育児介護休業法改正によって、女性の育児休業を促進しようとしましたが、実際の中小企業の現場では、女性求人をリスクと考えるようになりました。
出産年齢の女性の採用意欲は低減。「子育てが終わった女性か。子どもの面倒を見てくれるジジ、ババのいる女性」が裏の採用基準となったのです。
今回も、有給10日付与しなくてもよい短期パートの採用に切り変えるなど、仕事を失う労働者が出てきています。
これは戦後復興期のカリスマ創業者が力で引っ張る組織や、高度経済成長期の軍隊型ヒエラルキーを基にした役割型組織の時代の古いやり方です。
今の組織は大きく変化しており、労働者の多様性や自主性を重んじる組織形態が主となってきています。
このような労働者の多様性や自律的な働き方の方向性に対して一律の権利義務の定めは、時代に逆行しているようです。
次号では、組織の変遷とこれからの経営者が取り組むべき組織のあり方をお話していきます。