昨年は、大企業 トヨタの「プリウス」と田舎町の中小企業フェラーリ社の「フェラーリ488GTB」のお話をしました。
フェラーリ社のような中小企業が、中小企業の目指すべき姿であるとお話ししてきました。
なぜ世界中から、イタリアの人口17,000人の田舎町マラネッロにある中小企業の作る車を欲しがる人たちが押し掛けるのか?
「この北米向けスパコン(スーパーコンピューター)は、標準価格で値引きなしで納入するぞ」
「この大型機は、国内研究所向けに標準価格で納入するぞ」
私の新卒入社での最初の仕事は、コンピューターの値付けでした。
いわゆるマーケティング4Pの中のPrice(価格政策)です。
約10年マーケティングの仕事を通じて分かった重要な事柄は、次の3点です。
1. 欲しい人は価格にこだわらない
2. 欲しい人だけに売る
3. 欲しい人の数を把握する
どこの会社でもそのくらいわかっているとおっしゃるかもしれません。
「スーパーコンピューター、大型コンピュータ」などは非常に限られた顧客をターゲットにしています。
そしてそれを供給できるベンダーも限られています。
つまり欲しい人は多いけれど、品物が少ない状態が生まれやすくなります。
競合が少なく、需要量よりも供給量が若干少ない状態なのです。
この状態により価格決定権はベンダー(供給側)が持つことになります。
需要、供給をコントロールすれば価格決定権も手に入るのです。
自分で価格決定権を持てる経営戦略なのです。
フェラーリ社は、「欲しい人の数より一台少なく生産する」が商売の秘訣だと公言しているほどです。
もちろん、商品力、プロモーション、価格、販売戦略などの総合力が必要となります。
汎用品をグローバル、オープンチャネルで、より低価格で販売するより、欲しい人だけに、適量を、適正価格で販売することで価格競争だけの血みどろの戦いをせず、欲しい人に適性価格で販売することができています。
まっとうな企業の姿にできると私は考えています。
フェラーリ社のように大規模化を目指さず、あえて小規模、少量、適正価格で販売を維持する経営モデルがひとつの解であると私は考えています。
ちなみに「そんなのは、長い歴史のあるフェラーリ社だからできることだよ。燕三条の田舎工場とはちがうよ」と必ずおっしゃられる社長さんがいらっしゃるので付け加えますと、フェラーリ社は70年、ランボルギーニ社は50年、あの一億2千万円のパガーニ・ウライアを生産するパガーニ社はわずか創業15年、しかも従業員60名です